圓(まどか)

打吹羽衣伝説

倉吉のシンボル「打吹山」にちなんだ天女伝説

打吹羽衣伝説イメージ昔むかし、倉吉に住む若いきこりが、玉の仕事を終えて帰る途中、きれいな衣が木の枝にかかっているのを見つけた。「いったい誰の着物だろう…」と言いながら手に取ったところ、 「その衣は私のものです。どうぞ返して下さい。」と若い女の人の声がした。その女の人は、近くの湧き水で水浴びをしていたのだった。女の人は何度も頼んだが、とても立派な衣なのできこりは返さず、とうとう家に持ち帰ってしまった。

衣を返してもらえない女の人は、妻となり、きこりの家で暮らすしか仕方がなかった。

そして、何年か経つと二人の子供が生まれ、元気に育ったが、いつも春になると、お母さんは寂しい顔をするばかり…。

夏も近くなったある日、お母さんは二人の子供に「あなたたち、お父さんが私に何か隠しているのを知らないかい」と聞いたところ、子供たちは、お父さんに日頃行ってはいけないと言われていた屋根裏から箱をみつけてきた。 開けてみると、それは目も醒めるような、きれいな衣が入っていた。

お母さんは喜んでその衣を着ると、井戸の傍の夕顔のつるを伝って、スーッと空に舞い上がってしまった。そう、お母さんは天女だった。 「お母さーん」「おかあさーん」子供たちは泣きながら追いかけたが、どうすることもできない。「そうだ!お母さんは鼓や笛が好きだった。それで呼び返そう!」と山にかけ登り、二人は力いっぱい鼓を打ち、笛を吹いた。

母を慕って子供たちの打つ鼓と笛の音は、いつまでも、どこまでも響いていた。しかしお母さんは二度と帰ってくることはなかった。

二人の子供たちが鼓を打ち、笛を吹いたこの山を、その時から人々は『打吹山』と呼ぶようになったという。

遠い昔の悲哀に満ちたお話だが、今もこの地方では「打吹天女伝説」と言われて、広く語り継がれている。